地域おこしタイトル

 

 

サッカーの東アジア選手権で日本女子が初優勝を決めた夜、重慶名物の火鍋店で遅い食事をとっていると、携帯電話が鳴った。
 受話器の向うから重慶訛りの中国語が聞こえてきた。「誰?」「競技場で会った重慶の球迷(サッカーファン)だよ」。男子の日本―北朝鮮戦の前、孫悟空に扮した男性と連絡先を交換したのを思いだした。「あす北京に帰るんだろ。プレゼントを渡したいんだ」
 この男性は譚達慶さん(54)。会うと、重慶の球迷の歴史をまとめた1冊の冊子を手渡され、譚さんは中国のサッカー事情について滔々(とうとう)と話しだした。
 彼は重慶の薬品会社で電気工として働いている。球迷歴は十数年。応援の際は顔を赤く塗り、金色の衣装を着る。「中国代表は二流だが、球迷は一流だ」。胸を張る譚さんに、一部のファンの蛮行がいかに対外イメージを悪くしているか説明すると、悲しそうな顔をした。
 譚さんは五輪開幕に合わせ、仲間十数人と4カ月かけ北京まで歩く予定だ。道中、北京五輪のスローガン「同一個世界、同一個夢想」を広めるのだという。
 別れ際、「サインをしてくれ」と有名選手のサインが記された愛用の衣装を差し出された。面はゆさを感じながらペンを走らせ、道中の無事を祈った。

(秋田魁新報より転載)